とうとうやってきたこの日。
私は、アツシの実家へと通される。
好きな人の実家が怖いのは相変わらずで、ましてや挨拶前に入籍してしまった自分はまた、ケンの時のように恨まれるんじゃないかって不安で……。
けれど。
私がそこで見たものは、そんな不安じゃ足りないぐらいの現実だった。
居間に堂々と座るのは厳格そうな男の人。
キッチンにはまさか、先日までがんで入院していたとは思えないぐらいキビキビと働くお母さん。
いつもとは違い借りてきた猫のように、大人しいアツシ。
「葵は玉ねぎ嫌いだから~」
と、予め告げておいてくれたその日の夕飯は
肉と玉ねぎが半々の牛丼。
玉ねぎのサラダ。
分厚く切られた玉ねぎの入ったお味噌汁。
涙ながらに完食した私に、冷めた目でお母さんは言った。
「よく食べるわね?」
ありえない状況に適応する事が出来ない私は、ただ黙り込み……時間の過ぎるのをひたすら待つだけだった。



