珍しく真剣な私の剣幕に驚いたのか、先輩からも真面目に返事がやって来る。



「えっと……と……のコピー、それから……っぽいオリジナルとか」


徳井先輩が口にしたのは今流行ってるバンドの名前を数組。


それは……偶然にも全部私の好きなバンド達。



これは、きっと神様がくれたチャンスだよね?



私がケンに近付く為の。



こんな偶然もう無いかもしれない、だから!



「だったらキーボード要りませんか?」



知ってる。


先輩が口にしたバンドのコピーにはキーボードが不可欠だって事。



「まさか葵……弾けるのか?」



期待と驚きに満ちた徳井先輩の表情に、ただあっけにとられて立ち尽くすケン。



これまで新しい自分を探す!って頑張ってたけどこんなに積極的じゃなかったよね?



恋の力は凄いって自分でも思った。



「これでもエレクトーン歴10年なんです♪」



一気に4人の視線が集中する中。練習じゃない……素のままの、とびきりの笑顔で私は笑った。