それから1ヶ月。
撮影のある日は仕事を休み、時間が空いている限りはお店に出勤もする。
それなりに満たされていた……そう感じていた私が相も変わらず夜にチェックを訪れたその日。
この日……たまたま誰かの誕生日でなければ、違っていたのかな?
いつもの様にお気に入り、と決めたカウンター真ん中の席に座った私にアツシが声をかける。
「あやちゃん今日時間ない?知り合いの店で誕生日パーティーがあって一緒に来て欲しいんだけど……」
……そう、言われても。
一応店長のお客、である私を止めてくれるかと思った川口でさえ
「ゴメン、俺も行きたいんだけど行けないからさ。付き合ってあげてくれない?」
そう、頼むぐらい業界では有名な人の誕生日らしい。
さすがにそこまで頼まれて断る理由も無く……。
「じゃあ……いいけど」
夜の街を何故かアツシと二人、変な組み合わせ……なんて思いながら歩いていた。
背の高いアツシの歩幅に合わせる様にして、少し小走りになりながら空を見上げたけれど……今日は何故か、そこにケンを浮かべることが出来なかった。



