結局。
ギターが大好き!……だったらしいケンと徳井先輩はその後大盛り上がりで。
私達の入る余地は全く無し。
それに……私には気になってる事もある。それはもちろんアキナのケンに対する気持ち。
人から嫌われるのが怖くて、みんなと仲良くなりたくて、私にはあまり欲が無い。食事だって、遊びだって、相手が望む方で構わない。
笑顔でいられればそれでいい。
だけど……生まれて初めて出会ったあの人だけは、無理だよ。気持ちを隠し通すなんて事も出来なければ、ましてや譲るなんて絶対にしたくない。
「ってかさぁ、葵緊張し過ぎ!!気に入ってるな、とは思ってたけど……そんなに好きになったの?」
「ん……ってアキナはどうな訳?なんか話も盛り上がってたしひょっとし……ねぇ、聞いてる?」
焦る私の目の前に……一瞬きょとんとした後、苦笑いするアキナの姿。
私……そんなに変な事言った?
「ゴメン!ありえないから!私が好きなのはさ、何ていうかがっちりした体育会系?だから細い男は無理だから!」
最悪の事態を想定して大きく吸った酸素が一気に胸に広がって、それは次に心地良いため息へと変わる。
「じゃあ……」
「葵の恋を全面的に応援します!」
選手宣誓のように左手を上げてみせるしぐさは勝ち目がないぐらい女の子っぽさ満開で……アキナがライバルじゃなくて心から良かったって思ったんだ。



