そして、地元に帰った私は本当に久しぶりに笑顔を取り戻していた。



「川口♪私今日から女優だから!」



まるで子犬が転げるように、ドアを開ける手がもどかしい程の気持ちの高鳴り。



この街の夜は……黒い闇に覆われている。



街を歩けば風俗嬢なんて掃いて捨てるほど存在してる。



だけど、そんな世界でもさすがにAV女優だって人間は……まずいない。



いつものカウンターでそう発表した私に、唖然とするアツシと、理解のある男を演じる川口。



ここから始めるよ。



凛とした、堂々とした笑顔で、笑う私だったけど……。



一人、私の想像を振り切る思いを抱えたアツシがいたなんて……知らなかった。



ねぇ。



もう……愛なんていらないのに。



愛なんて……怖いだけなのに。