「……はい」
先生からかもしれないと思うと、声が震える。
「あ……吉川ですけど」
時計を見ると先生と別れてまだ1時間。
思わぬ早さと緊張で、何を話していいのかなんて分からなくて……。
「こんなすぐに連絡来るなんて思わなくて……びっくりしました」
ただ、今の心境を伝えただけの私の耳元へ、嬉しい一言が舞い落ちる。
「手紙ありがとう。嬉しかったよ。とりあえず今度一緒に飯でも行こうか?」
これは……デートの誘い?
そんな、幸せ過ぎる誘いをもちろん断るハズもなく。
「はい!是非行きたいです」
心臓の音が聞こえないか、そんな事を心配しながらはっきりと先生に答えた。
先生?
私は、本気でケンを忘れられるかもしれないって思いました。
崖に堕ちた私へ、ロープを投げてくれる人なんだと、そう期待しました。
この時は……本当に幸せでした。