帰りたくない。



でも、きっともうすぐ逢えるよね?



こんな事もあろうかと、用意しておいた手紙をそっと自転車の前カゴに入れた。



私の住む家の住所



携帯の番号



メルアド



そして……大人になった私の写真。



卒業したら、絶対にこの住所に迎えに来てね。



あと少し……待ってるから。



祈りを込めて、涙を堪えて、ケンに背を向ける。



さよならなんか言わせない。



小さな私を抱きしめて、いつも歌ってくれたあの曲が……タイミングよく車のラジオから流れた。



泣かないよ。



だって……もうすぐ逢えるから。