次の日。
太陽が昇り、私はその旅館の店主に見せてもらった住宅地図を頼りに、ケンの元へと歩いていく。
だけど全然知らなかった。
ここは深い山の中。
ケンがいるんだと……そう握り締めていたその住所に書かれた地名が、とても徒歩で回りきれるぐらいの範囲じゃないって。
もう歩けない……そう思うぐらい歩き回ったのに、ケンの家は見つからない。
ここまで……来たのに。
諦めきれない。
「もう少しだけ付き合ってもらってもいいかな?」
遠慮がちに聞いた私に、自分ももう歩けないだろう程疲れ果てているはずなのに……。
ナナさんはにこっと笑った。
ケン……こんなに近いのに……なんでこんなに遠いの?
最後の切り札。
(お願いしますっ!!)
心に念じ、私は携帯のボタンを押した。



