時を同じくして、セイコ姉さんとサエさんがお店を辞めた。
もっとお金を稼ぐ為に、ケンの住む県内にある一大ソープランドへ行くんだとか。
それをきっかけに、私も退店を決意する。控え室で仲良くしてくれる人がいなくなってしまえば、もうあのお店にいる理由が何も無いから。
ナナさんも、元々の仕事であるホステスに戻って行っていた。
転機の時。
それぞれ歩む道は違うけれど、落ちかけていた私に優しくしてくれた仲間の事を私は忘れない。
この仕事をして、1つだけ良かったこと。
仕事や、見た目や、そんな些細な事で人を見たりしなくなった事。
中に入らなければ、体を売って働く人の事を世間と同じように、偏見で見ていたかもしれない。
この選択が正しかったのか、間違っていたのか、それは分からないけれど全てがマイナスなんて事はないんだって思う。
「お世話になりました」
少し大人になった、胸を張った笑顔で私はお店を後にした。
最後の月、思い出にと頑張った私はNo.1だった。