その時は聞き流したそんな言葉を思い出したのは確か……。



その日、いつもの様に一人で私はライラに飲みに来ていて……そんな私を甘やかしてくれるマサトの存在も、永遠にそこにあるもので当たり前だって思ってた。



なのに。



その日、職場でマサトは倒れた。



持病の過呼吸で……苦しそうに。



「あや……ゴメン」



よろよろと裏へ、厨房の方へ消えていくマサト。



お客である私はそれを呆然と見つめてた。



奇声を発する繁華街の若者達の間をすり抜けるように救急車がやって来て、担架で運ばれていく姿をただ見送り……ライラの前で一人、置いていかれた時に気がついた。



私……一体何なんだろう?



隣にいる事すら出来ない私は……ただのお客さん。



分かってはいたけれど。



ずっと知らないふりをしていた、そんな事実に向き合ってしまった日。



結局他人では、ケンになれないんだと知った。



私の居場所はここじゃなかった。