それからの記憶は途切れてしまっていて、正直自分がどんな挨拶をしたかも覚えていない。
重症だ。
あまり露骨に見続けたら変態扱いされてしまうだろうし……そう思いつつも彼から目を離すことは出来なかった。
「あーおーい??なんか変なんだけど」
「ん……だよね?ゴメンっ!」
微かに赤く染まる頬に気付かれただろうか?
駅までの帰り道、私はこの感情を整理するのに必死だった。
見た目がいい男は敬遠してきた。
中身を知らないうちに惚れるなんて事……今まで一度も無かったのに。
「葵ってば!電車過ぎてったけど気付いてないでしょ?」
「えっ!?マジでっ?」
聞けば、電車のホームに座ったままもう数本の電車を乗り過ごしていたとか。
重症通り越して、もう入院した方がいいかもしれない。



