翌日。



未だアルコールが抜けずフラフラのまま、私は店へと出勤した。



あの人はケンじゃない。


似てるところなんて身長ぐらいしかない。



それなのに……。



【着信:コウキ】



電話が鳴ると心がざわめくのは何でなんだろう?



おかしいよ。間違ってる。



「もしもし?」



「あや?俺だけど、コウキだけど……」



「うん、分かるよ」



「俺さ、あやの事すごい気になってて……だからまた飲みに来てくれない?」



気になる相手を自分の店に飲みに誘う。



普通じゃありえないそんな誘いなのに、これから先の長い長い1年半を思えば、そんな時間があってもいいんじゃないか……なんて。



また……ずるっと崖から落ちる。



足は、まだまだ底に着かないみたいだ。