スズランの鉢植えは夫の希望でもあった。 スズランという花は、見た目の可憐さに反して、土の下は驚くほど強い。 女も一度、庭に咲いているスズランの花を手で引き抜こうとしたが、その名を示す、鈴のような花びらを、無残に散らしただけだった。 夫はその強さに、自分の希望を置き換えていたのだろう。 女もその事には気づいていた。 だが、進行性であるという医者の言葉が示す現実を、笑い飛ばすには、女も十分に歳を取っていた。