女は喫茶店に入る。 軽やかな音を奏でるはずのカウベルを、乱暴に響かせながら。 店内を見回し、一組のカップルを直ぐに見つける。 少女は顔を伏せている。 男は頬杖をつき、通りを眺めていた。 女は教師をしていた。 私立高校の臨時講師。 比較的、時間に余裕があり、今日はスズランの鉢植えを、注文した花屋に受け取りに来ていた。