女は少女を見ていた。 道の向こうの喫茶店のドアノブに手を掛け、深刻そうな顔をしている。 女は何故か少女に声を掛けたくなった。 このスズランの鉢植えも見せたくなった。 女は通りを急いで渡り、少女に声を掛ける。 だが、少女は気づかず、喫茶店の中に入っていってしまう。 そのしっかりとした足取りは、決意に満ちているというよりもむしろ、戦場に赴く兵士のような勇ましさも感じた。