男は自分が一方的に悪いと知りながら、彼女に別れを打診する。 彼女が別れるということ、その言葉すら忌み嫌っていることを知っていたからだ。 何度も浮気をした。 その度に同じ事を繰り返していた。 今度もそうだと思っていた。 俯いていた彼女は、青白くなった顔をつと上げる。 微かに力を入れた、真一文字の唇の口角だけをふっと揺らして、ありがとうと言うと、後ろも振り向かずに男の部屋を出て行った。