上下に揺れながら、あたしの前を行く光郎の華奢な背中。
……いつもそう。
いつも光郎が一歩先を歩いている。
歩いているような気がする。
時々は振り向いてさ、「お前、よく俺に付いてきてるな」って言ってよ。
時々でいいから。
そう後ろから投げ掛けてみるけど、もちろん返事はない。
でも多分、それでいいのだ。
あたし達は各々の正しさを、間違いなく信じているのだから。
………
学食の重い扉を開けて外へ出ると、藍色の世界はうんとリアルに視界に広がって、耳の側では風がゴウゴウと音を立てる。
光郎は
「きもちーー」
と大きく息を吸って。
あたしも
「そーだねー」
と空を仰いだ。
確かに。
音と色はどこまでも正しくて、どこまでも無限に広がっていく。
それに比べてあたし達は、なんてちっぽけで、取るに足らない存在なんだろう。
………
それでもいい。
それでもいいから。
と、あたしは思う。
あなたには音を。
あたしには色を。
……end

