純玲さんが少し視線を落としていくのを

追って見つめた先には椿の花が咲いていた。

「・・・・・そうね。」

ちぃ君、若って言われてたもんね。

そんな気は何となくしていた。

「反対なのですか?」

浮かない顔をする純玲さんに尋ねると、

首を横に振って足元を見つめた純玲さん。

「反対なんてしないわ。ただ、千治もみんなにも

自分の進みたい道を歩んで欲しいと願ってる。

稜さんもぶつかった壁を千治もぶつかってるんだと思うの。

背中を押してあげられたらいいのに、何考えてるか

分からない子だからどうしたらいいのかしらね?」

「だったら、あたしが願います!

みんながこれからどんな道に行こうともあたしは

絶対に応援して味方になります。

背中を押せるような言葉を掛けられるか分かりませんが、

そんな人になれるように努力もしますよ。」

だから、きっとちぃ君もみんなもこれで良かった

と思えるような選択をしてくれることを願うよ。

「ふふっ、日和ちゃんがお嫁さんになってくれると

千治も幸せになってくれそうね。」

「そ、そんな、あたしのような分際が烏滸がましいにも

程があるというものです!」

第一、ちぃ君にヤダと言われそうだ。

それに、ちぃ君には大事な女の子が居る。

あたしよりもずっと素敵な女の子が幸せにしてくれます。

「そんなことないわ。日和ちゃんは素敵な女の子よ。

みんながここに連れて来てくれて良かった。」

あたしもここに来れて良かった。

ちぃ君や伊織君・・他のみんなのことをよく知れたような気がする。

「そうだろ、純玲。」

廊下を足音を立てずに滑るような足取りでやってきた

稜さんを見て純玲さんが微笑む。

仲睦まじい夫婦のようで、見てるこっちがほんわかする。

「ええ、とっても素敵な女の子でたまに面白い発言をするのよ。」

お、面白い!?

か、家族揃って黒宮家恐るべし!

面白いと言われるとは思わなかった。

ある程度、失礼のないようにと気にかけていたが、

どこに面白い要素が転がってたんだ!?