やはり、裏庭には誰も居なくてそれが妙に不気味だった。

だったら、このメモは悪戯だったのね!

まぁ、困った人がここで待ちぼうけしてなくて良かったぜ。

悪戯にまんまと騙されてしまったが何もなくて良かった。

これなら、お昼過ぎに来れば良かったかな。

ティーチャー相沢の元に行こうかしら!

昼飯何か食わせろと言ってみようかね。

あれ、そういえばこの花壇はチューリップ植えたんだった。

春休みにも花壇の手入れに来ようかな!

一応、生徒会で学校に来なきゃいけない日があったような気がする。

何とも、入学式の準備を手伝って欲しいとかで。

そういえば、ティーチャー相沢の用事とは何だ?

これで、大したことなかったらプンスカしてやろう。

ぼんやり花壇を見ていると不思議なところにポツリ

置き忘れたバケツがしんみりと置いてあった。

「こんなところに誰が置きっぱなしに!」

使ったものはお片づけしましょうという標語を

生徒会に申請してやらんと。

バケツに近付いてバケツを持ち上げる。

「日和っ!!!」

急に名前を呼びかけられたことに吃驚して

バケツを落としてガコっという鈍い音が地面を伝う。

今の声、聞いたことあるな。

でも、呼び捨てで呼ばれたような。

そういえば、彼はあたしのこと名前で呼ばない気がするな。

何故だ!?もしや、地味な嫌がらせでもしてるつもりか。

「何かね?」

ゆっくり腰を降ろしてバケツを手に取り、

立ち上がろうとしたしたその瞬間だった。

視界に入るのは汗を浮かべてこっちに走ってくる

姿で何をそんなに急いでるんだろうと思った。

「・・・・・間に合った」

腕を広げたその中に閉じ込められるかのように、

抱きしめられて気が動転しそうになった。

「ま、間に合ったって何が!?」

そう声を出した時には全てが手遅れだった。

頭上から降ってくる机がスローモーションのように

降りかかってきた。

ゴンっと鈍い音を立てて地面に倒れた。

覆いかぶさるようにちぃ君がそこに居て、

視界に広がるのは青い空と窓から見えた何者かの手だけだった。