それからも、海斗さんと一緒に挨拶周りをして

ご飯にようやくありつけたのはパーティーが始まって

1時間後ぐらいのことでもうすでにクタクタだった。

大和さんが海斗さんと何か喋ってるのを盗み見て、

ローストビーフをありったけ皿に盛った。

フォークでブスブス刺して口に放り込んだ。

一応、周りを見てお上品に食べた。

お皿に溢れそうなほどローストビーフを乗せている

時点で上品さは欠けてるかもしれないけど、あたし

と言うよりは海斗さんに気に入られようと必死な

人だかりで社長になった暁にはああなるのかと将来を

不安に思ったりもした。

フライドチキンないのかと探しまくったけど、

鶏肉のソテーしかなかったけどがっつりお皿に盛った。

モリモリ食べてるとさすが一流シェフが用意しただけあって

美味しいから何回か取りに行った。

丁度、そんな時ぐらいにグレーのスーツを着た男が

近づいてきてお皿に残ってた鶏肉を一気に口に詰め込んだ。

「ぐふっ」

あたしに近付いてくるとは何奴!?

顔には一切出さなかったが、心の内は誰だよと思ってた。

「あれ、俺のこと覚えてない?」

いきなり来といて何言ってんだと思った。

「誰かしら?」

失礼は承知だけど、いきなり喋りかけてきた

んだから名乗れってんだい!

「この間、ホテルで会ったよね?今日も足

大丈夫かなと思ったんだけど、やっぱりすごい

ところのお嬢様だったんだね。」

「ああ、坊ちゃんか。芹沢グループの坊ちゃんでしょう?」

芹沢グループは日本きってのホテル業に力を入れた

一ノ瀬には劣るが力を持った財力のあるお家柄だ。

「そっちこそ、一ノ瀬のお嬢様だったとはね。」

「何か残念だった?」

「まさか、一ノ瀬の“ご令嬢”だったとは思ってなかっただけだよ。」

「そう?」

何故か、視線があちらこちらから向けられる羽目になる。

この男、早くどっか行ってくれないかね!

すごい注目の的になるからあっち行ってくれよ。

しかし、あっち行けとは言えないから我慢しないとだな。

社交界って面倒だな!愛想よくしてないといけないし、

鉄仮面で一日過ごした暁には明日は顔面が死んでるかもしれない。