優秀過ぎる大和さんはまさに究極の匠だった。

車のドアは必ず開けてくれるし、段差に気をつける

ように手を差し出してサポートしてくれる。

階段の時も高くて歩きづらいヒールに苦戦するあたしを

優雅にエスコートしてくれるわけでここまで気遣いが出来る

人間が居るだろうか!?と考えた。

「日和様、社長がお待ちかねですよ。」

「あわっ、ひっくり返ったらどうしようっ!」

「大丈夫ですよ、落ち着いて下さい。何があっても

日和様に恥はかかせません。」

ちょいと、今の言葉にひっくり返りそうなんだが!

大和さん、いきなり何を言うんだ!

「海斗さん、本日はよろしくお願いします。」

「うん、日和ちゃんお洒落してて可愛いね。

朝陽が見たら卒倒しちゃうんじゃないか?」

柔らかい笑みを浮かべる海斗さんが秘書の人から

顔をこちらに視線を向けた。

「いや、号泣するとは思いますよ。」

倒れる前に散々泣くんだと思われる。

七五三の時でさえ、大泣きしてたもの!

大げさすぎて恥ずかしくてしょうがなかった。

何をそんなに泣いたら気が済むんだねと我が父親ながら

意味不明に思った。

「朝陽には参ったね。」

緊張しなくてもいいように海斗さんが会話を楽しく

させてくれてこれも社長の力量なんだと思った。

そういうところを勉強するためにも良かったのかもしれない。

パーティー会場はどこかのホテルで有名ではあるらしいが、

初めて来たところでそんな有名とかそれどころでもない。

「挨拶の方は覚えてこれたかな?日和ちゃんなら、

簡単なことかもしれないけど初めてで緊張するかも

しれないから気を張らずにゆっくりと喋るといいからね。」

「ふむ、完璧です!」

「流石だね、食事は好きに取っていいからね。」

うむむ、美味しそうな匂いがしてますよ。

お昼はそんなに食べてないからもうお腹が鳴りそうな

ぐらい空いてるから遠慮してやるもんかと思った。

いろいろ会話をして大体のことを大まかに説明をしてくれた。

前に、大和さんが説明してくれたことで確認のような

ものだったので意気込むように頷いていざ出陣した。