茜色の空が紫がかってきた頃に鬼ごっこ終了の
お知らせがやってきてナル君がわざわざ迎えに来てくれた。
もう駄目だな、こんなに楽しかったらこの後なんて
こなきゃいいのにとかネガティブモードにスイッチ入りそうだ。
ナル君の温かい手に引かれて歩く廊下ではいつもどおり
不良メンバーズがふざけ合っててそれがいつもの光景なのに
焼き付けなきゃって遠目で見つめてるとナル君の手に力が
入ってドキッとした。
「ヒヨリン、俺今日やっと17になるんだ!」
「そうだったね。おめでとうございます。」
ナル君も早生れだったからみんなより遅れて
やっと一緒の年に並べるられるんだって喜んで
話していたことを思い出す。
「だから、ヒヨリン俺のお願い一つ聞いて?」
可愛く笑みを零すナル君がお願いと目を潤ませてやってくる。
何のお願いなのだろうか?
もしや、一緒にゲームしようってお誘いだろうか?
それとも、春休みの宿題やってほしいとか。
この間、春休みも宿題あるからってちょっと落ち込んでたよね。
何で、春休みに宿題なんてあるんだって不良メンバーズも
散々文句言ってたような気がする。
「な、何でしょうか?」
やっぱり、宿題は自分でやらなきゃ駄目だと思う。
それでも、ナル君に頑張ってもらいたいから出来る
限りのサポートはしようと思ってる。
だから、宿題のお悩みならあたしにお任せとナル君
の方に振り向いた瞬間手をグイっと引っ張られて、
不良メンバーズから死角のところに連れてかれた。
目を白黒させていると、いつの間にか可愛い顔してた
ナル君が男の子の顔をしていた。
何となく予感はしてたから体が動かなくなった。
ヤバイって思った時にはうっかり隙をつかれてた。
甘い香りが漂ってこれはナル君の匂いだと冷静に
自分を落ち着かせてるつもりだったけど、どうしたら
いいのか分からなくて固まった。
「俺のこと少しでもいいから好きになって。」
魔法みたいな言葉をかけられた時にはもう手遅れだった。
ナル君が優しくあたしの口を塞いだ。
はちみつ色した瞳は閉じていてナル君の綺麗な顔が
至近距離にあるってことにまず驚いた。
こんな状況は今までの経験上少なすぎてどう対処
すればいいのか分からずにギョッと目を見開いていた。

