Hurly-Burly 5 【完】


元々、彼女ほど俺たちのことを分かってくれる人なんて

居なかったのかもしれない。

いつだって彼女は堂々と接してくれた。

最初はどうなることかと不安はあったものの、

ここまで来たら彼女に着いて行くしかないかもしれない。

「おーい、もっくん、ひーちゃんの好きなの選んでくれよ。」

遠くの仲間が声を掛けてきた。

「もっくん、何気ひーちゃんと買い物よく行くよな。」

「そうか?」

そんな彼女の好きなものぐらい知っとこうかと同行した

買い物では嫌ってほど見るフライドチキン。

「何ピース買ってきゃいいんだ!?」

「どうだろうね?ひーちゃん、これ好きだと思う。」

「マジか!!!」

ひーちゃんの好きなものは変わってる。

大好物は鶏肉で間違いはない。

それ以外に好き好んで食べるものがどうもおっさんっぽい。

「つーかよ、春休みひーちゃん誘ってまたサイクリング

行こうぜ。ピクニックにしようとか言いそうじゃね。」

「遠足になりそーだろ。バナナはおやつに入らねぇよな!!」

「おやつ何円までありかも討論会開こうぜ。」

そんなひーちゃんを誰一人として仲間として認めてる。

「その前に進級祝いにひーちゃんに銭湯誘おうぜ。」

「コーヒー牛乳飲んでる情景が浮かぶぜ~」

「つーか、ヒヨリン体は女だった。

心は漢の中の漢なのにな!」

そんでもって性別抜きで好かれてる。

「今のひーちゃんに聞かれたら殴られてただろうな。」

「もっくん、マジヒヨリンに言うなよ。」

「勘弁してくれ!!ひーちゃん、実は凶暴なんだぞ。」

どっちにしても、ひーちゃん今日は喜んでくれるだろうか?

いつも表情を崩さないひーちゃんをどうやって崩そうか

それが俺たちの難題だったりする。

試験よりもずっと難しいわりに、表情が崩れると100点

もらったような達成感がある。

「なあ、もっくん何笑ってんだよ?」

「いや、平和っていいなと思って。」

彼女がいると賑やかなくせに穏やかだったりする。

ある意味、誰よりも懐広い子なのかもしれない。