元々、彼女ほど俺たちのことを分かってくれる人なんて
居なかったのかもしれない。
いつだって彼女は堂々と接してくれた。
最初はどうなることかと不安はあったものの、
ここまで来たら彼女に着いて行くしかないかもしれない。
「おーい、もっくん、ひーちゃんの好きなの選んでくれよ。」
遠くの仲間が声を掛けてきた。
「もっくん、何気ひーちゃんと買い物よく行くよな。」
「そうか?」
そんな彼女の好きなものぐらい知っとこうかと同行した
買い物では嫌ってほど見るフライドチキン。
「何ピース買ってきゃいいんだ!?」
「どうだろうね?ひーちゃん、これ好きだと思う。」
「マジか!!!」
ひーちゃんの好きなものは変わってる。
大好物は鶏肉で間違いはない。
それ以外に好き好んで食べるものがどうもおっさんっぽい。
「つーかよ、春休みひーちゃん誘ってまたサイクリング
行こうぜ。ピクニックにしようとか言いそうじゃね。」
「遠足になりそーだろ。バナナはおやつに入らねぇよな!!」
「おやつ何円までありかも討論会開こうぜ。」
そんなひーちゃんを誰一人として仲間として認めてる。
「その前に進級祝いにひーちゃんに銭湯誘おうぜ。」
「コーヒー牛乳飲んでる情景が浮かぶぜ~」
「つーか、ヒヨリン体は女だった。
心は漢の中の漢なのにな!」
そんでもって性別抜きで好かれてる。
「今のひーちゃんに聞かれたら殴られてただろうな。」
「もっくん、マジヒヨリンに言うなよ。」
「勘弁してくれ!!ひーちゃん、実は凶暴なんだぞ。」
どっちにしても、ひーちゃん今日は喜んでくれるだろうか?
いつも表情を崩さないひーちゃんをどうやって崩そうか
それが俺たちの難題だったりする。
試験よりもずっと難しいわりに、表情が崩れると100点
もらったような達成感がある。
「なあ、もっくん何笑ってんだよ?」
「いや、平和っていいなと思って。」
彼女がいると賑やかなくせに穏やかだったりする。
ある意味、誰よりも懐広い子なのかもしれない。

