もう挨拶文も完璧に覚えてしまった。
当日の服は前に一度来てチェックしてある。
あたしには全然似合わない気がするけど、
パーティーだし一ノ瀬の後継者としての身の丈がある。
エステっていうのに明日人生初の潜入を果たす。
本当はまだ早いんじゃないかなって思ったけど、
行ってみてはいかがですかっていう大和さんの
言葉を信じてみようと思う!
念のため、綺麗になって挨拶は述べる必要があると思った。
あの子、普通すぎやしないとか言われたら困るし、
最大の努力はして挑もうと思ってる。
伯父様の跡を継ぐものはあたしだということを知らしめる。
今日はナル君の誕生日で買い出しに行ってたり、
欠員が多いのは準備に勤しんでるからだ。
本当はあたしも一緒に準備に参加したいけども、
今だってウズウズして駆け寄りたいぐらいだけども、
主役だからあっち行ってろって言われた。
だから、気が紛れるように鞄に入れてた新聞を
読むふけっていたというのに酷いもんだわ。
「何だよ、んな不貞腐れた顔してんな。」
「つまんないもんよ。」
「ジッとしてらんねえのかオメエは」
慶詩が面倒臭そうに頭に巻いたタオルを解いて、
ぺっとテーブルに投げた。
「ちぃ君と京君と伊織君はどこ行ったんだい?」
「買い出しチームだろうが。」
「だったら、あたしも連れてってくれればいいものを!」
「しょうがねえな、後で構ってやっから今は大人しくしてろ。」
「何だね、その言い方!あたし、大人だもんね。」
「ッチ、仕方ねぇな。コイツ倒しとけ。」
DSの電源を付けてあたしにホイッと投げてきた。
どわわわっとそれを受け取るとボス戦を控えた状態で
画面が現れてゴクリと息を飲んだ。
これ、最近ハマってるって言ってたヤツ!?
いいのか!?こんな大事な局面であたしへのパス!!
もしや、慶詩はあたしの腕を買ったのかもしれん。
託されたあたしにならとボス戦を任された。
これは、勝たないとならないわ。
必須アイテムを確認しつつ本腰をゲームに入れる。
それを見ていたサユはため息を吐いた。

