said:馨



日和ちゃんが立って足早に店の店主にたこ焼き下さいと

意気込んでいるのを見ると本当に彼女には敵わないと思った。

どこまで知ってるのか分からない。

でも、彼女は相当頭の賢い子だってことは分かってたつもりで

慎重にやってきたはずなんだけどな。

「さーて、ど~するよ?あれじゃ、最近の騒がしいことに

気づいてんじゃね~のか?」

そもそも、日和ちゃんは自分のことは鈍感なんだ。

他人のことになると鋭いとは思ってたけど、

最近日和ちゃんが目を付けられたことを彼女が

知っているとなるとやはり外部で接触があったことが考えられる。

伊織の吐く紫煙が空中に漂う。

「おい、ヒヨリンなんかキレてっけどなんかあったのかよ?」

「伊織、ヒヨリンに変なことしただろ!」

2人は肝心なところ聞き逃してたんだろうな。

「俺は何もしてねぇーよ。ナルちゃん、酷いじゃねーの。」

「ばっ、伊織が紛らわしいことばっかすっからだろ!」

「しょうがねえじゃねーの。俺の仕事はそういうの専門だからな。」

伊織が煙草を指に挟むと灰皿に灰を落とした。

「んじゃ、その仕事の成果は出たのかよ?」

慶詩が丸椅子に腰を下ろすと京の手の内にある袋

からたい焼きを取って口の中に放り込んだ。

「そーだな。東の動きが明らかに変わりつつあるな。

向こうのトップが戻ってくるって騒ぎたってやがったぜ。」

「何だよ、あのイカレ野郎どっか山奥に転校したとか言ってなかったか?」

慶詩が足を組んで嫌そうな顔をした。

「一時的な処置ってことになってる。戻ってくるのは

時間の問題だった。」

京がナルとユウヤにたい焼きを配る。

「問題はここからだろ、今まで休戦してた地区が一気に

活動を始めたら押さえ込めなくなるだろ。」

ユウヤがバシっと机を叩いた。

「もう一つ厄介なことがある。どうも、ウチのひよこ姫

東の幹部に目つけられてるみてえーよ。」

随分と日和ちゃんは危ない橋を渡ってるみたいだな。

何がどうなったら東の幹部と遭遇することが今まで

あったって言うんだか安全に安全にって守ってきた

つもりがやってくれるな。