周りが敵ばかりのみんなの方がずっと心配だ。

たくさん痛い思いしてきたはずだもの。

あたしのはなんてことない。

「こ、怖いな。」

脱脂綿が傷口を綺麗にしてくれる瞬間、口から

こぼれ落ちるかのように出てた。

ピクリと肩を揺らしたちぃ君がたい焼きを口から離した。

「何が怖い?」

きっと、ちぃ君は勘違いをしている。

自分が怖がられてる対象だと思ってる。

そういうんじゃないのにどうしていつもそんなふうに思うのよ。

「あたし、置いてかれるんじゃないかなとか。

また、嘘つかれて平気な顔して傷ついたり

するのあたし嫌だよ。そんなことしないでね。

邪魔だったら邪魔だって言ってくれた方がまだ分かる。」

やっぱり、警察に連れてかれた時のことは本当に悔しかった。

身代わりになんてなるなよって思った。

勝手なことしないでよって言ってやりたかった。

「あたし、守ってほしいなんて一言も頼んでない。

自分の身ぐらい自分で面倒見れる。寧ろ、あたしが

守ってやる!だ、だから、その・・・頼りないとか言わせないからな。」

どっちみち、友達になるって覚悟した時点で不良と

戦うかもしれないことは目に見えてんだ。

そこらに居る可愛い女の子にはなれそうにない。

王道のヒロインキャラのように誰かに守られるような

タマでも生憎ない。

「こちとら、そんなヘボい不良に成り下がったもんじゃねーぞ。」

「け、慶詩!サボったのか!!」

慶詩の後にユウヤとナル君もやってきて大所帯だ。

「サボってねーだろうが。つーか、いつまで買い物行ってる気だよ。」

「ヒヨリン、どうしたんだよそれ!!」

「転んだんだろ。」

もうここぞとばかりに一気に喋る。

あたしが勇気を出して言った言葉を打ち消しやがって!

「バ――――――――――――カアアッ!!」

あたしの気も知らないで本当にいいご身分よ。

不良さまさまもいいところだわ。

いつか絶対にその傷に触れて癒してやる。

大きな傷を抱えてることなんてあたしが分からないとでも思ってるの?

あたしはそこまで鈍感なんかじゃない。

あたしは寛大なんだってこと証明してみせる。