馨君が、消毒液を膝にバシャバシャ垂らす。
「ひっぎゃあああああああああああああ」
し、死す!あたし、死んだ!
「日和ちゃん、大げさだよ。」
「馨君、鬼だ!鬼のお面被って豆でも捲くってのか!!」
ギロって馨君の凍るような瞳を前に口を噤んだ。
「日和ちゃんさ、女の子なんだから怪我しちゃ駄目だよ。
傷でも残ったらどうするの?あんまりボーッとしてるから
こうなるんだよ。分かってる?」
確かに、そうだ。馨君が言ってることは何一つ間違ってない。
いつもあたしが空想に耽ってる時にこうやってドジする。
「ご、ごめんなさい。で、でもね、これぐらいで傷は
残ったりしないと思うんだよね・・・・」
「日和ちゃん、分かってないよね?」
馨君が言ってることは100も承知だ。
「あ、あたしが言いたいのはそういうことじゃない。
それで、馨君が責任感じたりすることはないよ!
これは、あたしの不注意なわけだし・・・修行して
空想に耽っても転がらないように起きあがりこぼし
に弟子入りしてみようと思う!!」
「分かってないじゃん・・・・」
馨君が落胆するのを見てギョッとした。
「か、馨君、落ち込んだ!?だ、誰だ馨君を
落ち込ませたのは一体どこの馬の骨だ!!」
「「「お前だ」」」
3人揃ってハーモニ奏でた!
「す、すごいよ!ちぃ君と伊織君と京君で
合唱隊でも作ろうとしてるのね!」
「慶詩を誰か呼んで来いよ~」
伊織君が力なくそう言うから慶詩がやって来そうだ。
「日和ちゃん、何も妄想しちゃ駄目とは言ってないんだよ。」
「うむ」
「ただね、危なっかし場面でそれを発揮するのが心配なんだよ。」
「うぬ」
「危ないことに首突っ込むのも大概しょうがないって諦めてる。」
「なぬ!?」
「それで、日和ちゃんが傷ついたら誰だって嫌だって思うんだよ。」
「・・・・うむ」
「ほら、無事だって聞いた時泣いてたヤツも居ただろ?」
馨君は責めるようなことは何も言わない。
ただ、本当にあたしを心配してくれるんだって思った。

