何としても、2人の口封じをしておかねば!!
2時間サスペンスの犯人もきっとこんな気持ちだった
だろうな。あたしには今よく分かるわ。
「あ、押しちゃった~」
伊織君の馬鹿のせいで殺意が芽生えた。
『伊織?煙草吸いに行ったんじゃなかった?』
馨君だしね!!もう絶対に黙ってろよと伊織君を
見るとヘラヘラ笑いながら軽い口調でひよちゃんがね~っと
口走りやがった!!
瞬時に伊織君の口を塞いだ。京君が持ってる紙袋から
たい焼きを引っつかみ口に押し込んでやったのだ。
『伊織、日和ちゃんと一緒?』
ま、マズイことになったよ。今、あたしが口を開けば
一緒に居ることがバレてしまうではないか!
バレてもいいんだろうけど、何で電話してきたのって
感じになっちゃうじゃないかね。
「・・・馨、俺。ひよこも一緒だ、たい焼きは
買ったけど何か必要なものある?」
『そっか、京が一緒なら心配要らないね。たい焼き
買いすぎないでいいからな。ナルがプリン食べたいって
言うから買ってきてやってくれないか?』
「・・・・・・分かった。」
京君、あたしの腕の痕言うつもりがないのかな?
引っ張られてたあの日帰って風呂場で発見した
この手首の痕はあたしの色白の肌に青紫な手形を
残して薄くなってきていた今日この頃であった。
ケータイを切って伊織君にケータイを放り投げた。
空中を放物線を描くそれを見ていると伊織君の手に
綺麗に収まった。
「あーあ、京ちゃんったらひよこ姫が困るの見て
られないんでしょーよ。」
「・・・・・説明を聞いてから判断すればいい」
「でもさー、このお嬢ちゃん正直なこと話すつもり
ねぇーのよ?俺たちに隠し事よ、ひでえじゃね~の。」
伊織君が泣き真似をするものだからイラっとした。
なんてふざけた野郎だと怒り狂いたくなった。
自分だって隠し事多いくせにあたしのこと言えるのか!!
そんなこと言えるわけないけどさ、気にならないわけじゃない。
無理に聞いてもしょうがないって言い聞かせてる。
そんなあたしの気を知ってるか!?
もう、春は直にやって来るんだよ?

