オラ、どんと来い!
そう思ったのは何分前のことか。
いつまで経っても京君の手はある一定の場所で止まる。
そこに何かバリアが貼られてるかの如くで非常に歯痒い。
それでも、無理やりガバッと京君の手を掴んだら
確実にあたしは京君から嫌われるに違いない。
待つとは言ったからあたしの忍耐強さが問われる時が
ついにやって来たんだと思われる。
「京君、今日はこの辺にしとこう?」
見てると京君の額には汗がこれでもかってぐらい流れてた。
相当頑張っていたんだと思う。
無理に無理を重ねたに違いない。
「・・・・・・もう少し」
「京君に無理して欲しくないからいつでもリハビリ手伝うよ。
だから、今日はこの辺にしてたい焼きさん買いに行こう?」
京君に汗なんて似合わないんだよ。
それをこんなに汗流させちゃってあたしがみんなに責められるよ。
慶詩に何しやがったてキレられるね。
アイツ、何気すぐキレる短気だから困ったもんだわ。
「・・・・・・ごめ」
「謝ることないって言ったでしょ?って伊織君、君って
にゅるっと登場するよね。」
京君の後ろからひょっこり伊織君が出てきた。
「何だよ、ひよこ姫転んじまったのか~?」
「どう見ても転んだの分かるよね?」
伊織君の登場に自然と手を差し伸べてきた伊織君
の手を借りてよっこらしょと立ち上がる。
「おめぇーさ、おばちゃんじゃねーんだからよっこらしょはねえだろ?」
「伊織君、殴っていい?あたしの正義の鉄拳喰らいたい!?」
色男伊織君の登場に京君は心なしか安堵した。
「ひよこ姫、駄目だろ~よ。京ちゃんに無理させちゃ
うなんてさ、慶詩キレちまうよ~、アイツ、短気よ~」
「うん、何かその予想は当たりそうだ。」
伊織君も奴が短気なのをよく知ってるらしい。
「・・・・・伊織、俺は無理はしてない。」
「ん~、知ってるー。俺が京ちゃんと何年の付き合いだと思って
るんですかねー。だからだよ。焦んなくたってひよちゃんは
京ちゃんを待ってくれんじゃねーの?」
ちょっと、伊織君狡いよ!
あたしの前で京君と仲良しアピールしないでよね。
肩組んで見せつけんでも良くないかね!
あ~、クソッ!!男に生まれてきたかったぜ!!

