――――――今まで、どんな感動話を聞いても心では

感動してもあたしの顔がそれに反応出来なかった。

だけど、ナル君がポツリと呟きながらあたしに

大事な自分の話をしてくれてそれを聞き漏れがないように

真剣に聞いて泣きたくなった。

今まで、どんな気持ちで過ごしてきたんだろうって

思うと胸が痛くて代わってあげられたらいいのにって思った。

ナル君がとても綺麗で純粋な心を持ってるのは多分

みんながそれを守ってるからで女の子のより可愛いナル君が

道端でタチの悪いナンパに声かけられても視線で相手を

ひれ伏したりしてるの見たことあったなとか思い出すと

すごく信頼しあってることが分かる。

可愛いけど、ちゃんとナル君を認めてる。

女の子みたいでたまに女装させようとしてるけど、

それでもナル君はナル君でいいんだって居場所を作ってる。

「ズベべべッ―――!」

鼻水が大洪水でナル君の服に付きそうになって自分の

手に擦り付けるとナル君が寒いかって聞いてきた。

何て言葉を掛けていいのか見つからなかった。

だからって盛大に鼻水を洪水させてるのもそれはそれで

申し訳なくてダムの建設を試みた。

工事のおっちゃんたちに至急鼻水ダムを作って

もらいそこに仮設置してやろうかなんて考えた。

「ぶびっ」

鼻水止まんないよ。

寒いわけじゃないと思うのに何か言うこと聞いてくれない。

「ヒヨリン、ごめんな。寒かったよな。

長話に付き合ってくれてありがとうな。

こんな重い話嫌だったよな?」

ナル君が眉を下げて困ったようにあたしを見つめる。

不甲斐ないばかりにごめんねと言ってるようで、

ナル君はちっとも弱くなんかないのに。

それだったらあたしの方がずっと激弱だと思うのに。

それなのに、こんな時まで優しい子だ。

あたしのことを気遣って我慢して泣かない。

泣きたいのはナル君の方なのに。

ずっと我慢して笑おうとしてる。

そんなに頑張る必要はないのに。

「ううん、ナル君がナル君で良かった。

この鼻水には寒いという意味はなく、

ナル君が傍に居てくれてるのに寒いわけないよ。

ありがとう、あたしに大事な話をしてくれて。

こんなあたしにナル君を教えてくれて嬉しいよ。」

どうしたら、あたしはちぃ君みたいにナル君を甘やかせて

やれるんだ?