街灯が照らし出して影を作る帰り道、

ずっと誰かが後ろを付けている。

気がついても自分の考え過ぎだって

足早に早く家に着けと急いでるのに中々距離が

あって思うように進まない。

子供の足なら尚の事だったと思う。

怖い、怖い、怖い―――――

学校で先生が不審者が多いからって言ってたのを

思い出して途端に怖くて怖くてしょうがなかった。

ランドセルに引っかかってる防犯ブザーを握りしめて、

重くなった足を懸命に蹴る。

誰も近くに居る人なんて居なくて、後ろから付けてる

人がどんどん距離を詰めてくる気配だけは鮮明だった。

「ちょっとさ、お兄さんと遊ぼうか?」

追いつかれて逃げ道を阻んだ手が、

するりと頬を滑り落ちてきて冷や汗を掻いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

声が喉に張り付いたみたいで苦しい。

何で、嫌だって拒めないんだよ。

「君、すごく可愛いよね。」

思い出されるのは親父の面影だった。

その男に、親父の面影を重ねて恐怖に支配されてしまった。

「女の子なのに黒いランドセル?」

俺は―――――――――

気味の悪い笑みを浮かべてベタベタ触ってくる。

それが、完全に親父に被って嫌だって言えなかった。

嫌だって言ったら殴られるかもしれない。

嫌だって本当は言いたいけど、逆らったら俺だけじゃなく

母さんまで殴ってくるかもしれない。

「赤いランドセルを買ってあげよう。」

俺は―――――――――

こんなふうに思われるぐらいなら俺の顔要らねぇ。

この顔のせいで人が狂うなら欲しくねぇ。

俺なんて居なきゃ親父が変わっちまうことなんて

なくて、兄貴だって傷つくことなくて母さんを

働きずめにさせることだってなかったはずだ。

全部、全部、俺のせいだ。

「ついでに、スカートも買ってあげようね。」

“俺は男なのに”

どうして、誰も俺に気づいてくれねぇんだよ。