母さんと親父はそれからすぐに離婚した。
離婚って言葉は入院中の兄貴が言ってた。
だから、先生に聞く前に辞書ってので調べて知った。
昔、母さんと親父は親の反対を押し切って結婚したって
ことを兄貴が病室のベットでポツリ呟いた。
母さんの親は結婚を認めてなかった。
それが、母さんの実家との疎遠に繋がるものだと
いうのは兄貴が説明してくれて初めて知った。
だから、じいちゃんもばあちゃんも親父の方しか知らない。
今まで、俺たちの知らないところで母さんも
親父に暴力を振るわれてたことが遭った。
そう言った兄貴に俺はまたしても何も知らずにいた
ことを思い知った。
「だけどな、母さんは俺たちが手を出されなきゃ
いいって我慢してたみたいなんだ。」
「どうして我慢なんかすんだよ?」
「俺たちに寂しい思いさせたくなかったんだって。
父親が居ないと周りから少しばかり変な目で見られるんだ。
だから、家族はいつも一緒じゃなきゃ駄目だって
言い聞かせてたみたいだな。」
「何で父親が居ねえと変な目で見られんだ?」
「世間って奴は何かと厄介なんだよ。」
「世間ってのは俺たちの敵なのか?」
熱の下がった兄貴は少しだけ辛さが引いていて、
ベットから体を起こして椅子に座ってた俺に手を伸ばした。
「敵なのかどうかは分からねぇ。時には、敵になったり
するかもしれねえけどな、もしかしたら味方になってくれる
時もあるかもしれねぇんだ。それはな、成が経験することで
将来分かって納得出来るのかもしれねぇ。」
「・・・・・・兄ちゃん、何で兄ちゃんは女の格好してんだ?」
ずっと、昔からだった。
ううん、正確には俺を庇ったその日からずっとだ。
長い髪に服装はいつも女物を身につけて、
化粧をして可笑しいとは思ってた。
「それは世間が厄介だからなんか?」
「・・・・俺の容姿が醜いからだ。」
小さく俯く兄貴がそれをどんな気持ちで答えたのか分からない。
昔から、可愛いと散々言われた俺には憧れるカッコイイ
兄貴だと思ってたのに兄貴はそれを納得してなかった。
俺と同じで自分を嫌いになりかけてた。

