男が悪かったなと素直に謝罪した。
「この街のことだ。千治、始末は俺が付ける。
この店はもう駄目だ。いろいろとやべえことになってたみたいだな。
店の金横領してたオーナーが捕まりゃもう好き勝手出来ねえよ。」
「・・・・好きにしろ」
ちぃ君がスタスタ歩いていくのを見てみんな着いて行く
ものだからあたしもナル君の手を引いて後を追った。
店の外に出ると淀んだ空気が少しだけ改善された。
「あの失礼な人は一体何者なんだ!?」
外に出てすぐに思ったことを口走ると、
ナル君がギュッと手を強く握った。
「同業者かな、風神会って言ってそれなりに大きい組織で
若くしてそこの№2ってところでさこの街はあの人に逆らえない。」
「強いの?みんな、負けちゃうの?」
「強いとは思うよ、そうじゃなきゃ№2になれないだろうしね。
でも、負けたりはしないと思うよ。戦うってことがないから。
争うようなこともしてないし、トップが何よりも稜さんの
知り合いでウチとも付き合いはある。」
馨君の説明にホッとした。
「良かった、あたしの勘はやはり当たっていたようだ。」
悪い人じゃないような気がした。
「えっ?」
「さて、帰ろうではないか!!」
今回のことで知ったのは少しだけ自分の無知さだ。
「馨、ターヤンに電話・・・・」
ちぃ君が欠伸をしながら無表情で呟いた。
張り詰めた空気が解けた瞬間だった。
「そうだね、他にも美男たちにも連絡しないと。
日和ちゃん、ナルのことお願いしてもいいかな?」
みんなケータイを持ってそれぞれ仕事を始めた。
「んぬ?」
馨君のその意図がよく分からなかった。
あたしがナル君を守る任務・・・あの人どうしたんだろうか?
ナル君を守ろうとした人はどうやらもうお店の中には居なかった。
張り詰めた糸が溶けたのはナル君も同じだった。
顔を下に向けて地面を見つめるナル君は
どこまでも頑固者だった。
だから、あたしは自分が今出来る最大限に
ナル君を甘やかしてやろうと思って大通りに出た
ところに手を繋いでみんなと少し離れたところへ連れてきて
ギュッと抱きしめた。

