その時だった、ガシャンっと音を立ててナイフが
転がって巨体だったぬりかべの膝が地面に付いた。
「誰だ、テメェッ!!」
よく分からないけど、助かったらしい。
次の瞬間には男は巨体の体を吹き飛ばされた。
その迫力だけで失神できると思えた。
「ち、ちぃー!!伊織っ!!」
ナル君が嬉しそうに声を上げた。
今のはどうもあの2人の仕業だったようだ。
「ちーさん、派手にやりやがったな。」
じゃなくて、ちぃ君が激怒したらしい。
「大丈夫か?怪我してないか?怖いことされてないか?」
そして、ちぃ君質問攻めが再来した。
「ヒヨリンが助けに来てくれたんだ!今まで、
すげー頑張ってくれてな。」
「そうか、よく頑張ったな。怖かったろ。」
ナル君の頭を優しく撫でるちぃ君にナル君の
目にはいっぱいの涙がみるみる内に溜まった。
あたしにはちぃ君みたいな包容力がないのかと身にしみた。
日本のお母ちゃんにはまだまだ修行が必要だそうだ。
よしよしっとナル君の頭を撫でるちぃ君と、
その隣にしゃがんだ伊織君に視線を向けられた。
「馨とユウヤはどうした?」
「・・・・・・・・・・・・」
「ひよちゃん、約束破ったのか~?」
「・・・・・・それは突然のことだった!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
2人の無言に冷や汗がダラダラ流れた。
「事実、あたしはその瞬間何が起きたのか
よく分からず人類の快挙成し遂げてやったぜと思った!」
「帰ったら、覚悟しとけよ。」
「む、無実だ!規定の約束はちょっぴりとだけ
守れなかっただけでほらナル君を見つけた任務は
遂行したではないか!!」
どうか、あたしの頑張りに免じてくれ!!
明らかに、ちぃ君は怒ってる。
伊織君は最早呆れてる。
煙草スパスパ吸いながらオメェーねと言ってる。
ナル君を子犬のように愛でてるちぃ君は魔神が
憑依しているかの如くでプンスカだと思われる。

