でも、あたしは諦めなかった。
煙玉が駄目なら同じ煙を出すものを使用すればいい。
コーナーに丁度設置されていた消化器を手に取り、
栓を抜いて両側に噴射させた。
こういう時のあたしは強いと思う。
我ながら、カッコイイ気がした。
プリンセスを守る騎士になった気分が八割方だった。
だから、あたしは妄想してる時ほど強い時はないようだ。
「ナル君、こっちだ。」
ナル君の手を離さずに煙の中をサングラスという
必須アイテム使って切り抜けた。
危機が来るたびあたしは全力投球した。
ナル君を守る約束を果たすために課っせられた使命を
託されたあたしが守ることに意味があった。
それでも、やはりピンチはやってきた。
煙を抜けて更に角を曲がった瞬間、
ぬりかべお化けが突如襲ってきた。
床にまたもや吹き飛んだあたしとナル君に、
そのぬりかべはちっともゲゲゲの鬼太郎に
出てくるチャーミングさなんてなかった。
ナイフのようなものを翳されてさすがのあたしもお手上げだった。
「ちょこまかとよくやってくれたじゃねーかッ!!」
怒声というのはやはり慣れない。
ナル君を背中の方に押しやって何があっても
傷一つ付けるもんかと覚悟を決めた。
「ぬりかべさん、貴方にナイフは似合わないわ!」
「何言ってんだこのアマッ!!」
「ぬりかべさんの攻撃と言ったら押しつぶすよ!
武器を持った正統派じゃないぬりかべさんはぬりかべ
さんとは言わないわ!!勝負は次回に持ち込しよ。」
「・・・・マジでオメェなんなんだよ!!」
心底気味悪がるぬりかべに首をかしげた。
何故、そんな顔をされなきゃならないのかしら?
「ひっい!」
そんなあたしに腹を立てたらしいぬりかべはあたしの
頬にナイフを近づけてきた。
恐るべき行動に出たぬりかべに咄嗟のことナル君が
後ろにあたしを引きずった。
絶対的なピンチが到来して緊張が辺に走る。
「商品に傷つけんなって言われってんだよな。
でも、お前が逆らうから悪いんだぜ?」
ニヤリと笑ったぬりかべに恐怖を抱いた。
ナル君に抱きしめられて逆に庇われた。
震えてるナル君を守るはずだったのにあたしが
逆に守られる形になったことに言葉にならなかった。

