両手も両足も縛られて痕まで残ってる。
本当にプッツンだね。
これはもう怒ったさんだね!ナル君になんてことして
くれたんだって殴り飛ばしてやりたい。
小さな力でぎゅっとあたしの服を掴んで必死に
涙を堪えるナル君の頭を優しく撫でる。
「ナル君、歩ける?あたしが負ぶってあげるよ。」
首を横に振るナル君に手を差し伸ばしたら、
強く握り締められた。
「絶対にあたしが傍にいてナル君を守る。」
出てこい、ナル君を攫った人攫いめ!
あたしが正義の鉄槌を下してやる!
「一緒に帰ろう?」
握った手の平はいつものナル君の温かいのと
違って少し冷えていた。
だから、あたしの手温かくなれよって念じた。
この氷の塊め、ナル君のプリチーな手が凍瘡でも
したらどうしてくれんだ!!
「・・・・・ヒヨリン、俺の他に誰か居なかった?」
それを口にするか困った。
守って欲しいと言われた時にもう一つだけ約束を取り付けられた。
“俺のことは秘密にしといて”
彼が一体何者なのかその時点で不思議に思った。
ナル君を大事に思う気持ちが大きくて、
言わないで本当にいいのかなって考えた。
「スーパーヒーローの知人が居りました。」
だから、こんな言い方で残しておきたかった。
貴方が一番に守っていたんだと。
何か事情があるからそれを簡単にあたしが
判断して決め付けることは出来ない。
だけど、ここに居たってことはあたしが知ってます。
「ヒヨリンの友達?」
「・・・・うぬっ?まぁ、そういうことにしときましょう。」
正体不明な友人(仮)ということにしておこうと思う。
キョトンとした顔のナル君はもう辛そうではないものの、
まだ震えが止まってない。
手に絡まった紐を早く解いてあげたいところだけど、
さっきの人もしくは違う人が来ても逃げ道のない
この部屋では反撃のしようがないと思ってナル君の
手を引きながらこっそりと周りを気にしながら部屋から出た。

