手の紐を解く作業に没頭しているとケータイが
着信の知らせを鳴らした。
音こそ鳴らなかったものの、振動で床が揺れた。
「ここ、防音のドアだから大丈夫だ。」
そして、あろうことかここはそんな特殊ルームだったらしい。
「ぼ、防音っ!?」
「喚いても叫んでもバレねぇようにってんじゃねぇか?」
「お、恐るべき人攫い!」
「あんたさ、よく女に1人でウロチョロ出来たな?」
「いや、ですから友人と一緒でしたから。」
「そんでもって、あんたちょっと変わった女だな。」
「・・・・最近よく言われるのですがどこら辺でしょうか?」
ケータイの通話ボタンをポチっと押すとブラックオーラが
受話器から漂ってきた。
ダークの侵食が迫ってきたようだ。
『今、どこに居る?』
「えっと、部屋の中に閉じ込められた模様です。
ですが、ご心配なく敵襲はおりませぬっ!!」
馨君の声がワントーンぐらい下がっててビビった。
これは、もう次にあったら魂吸い取られるぐらい
に怒られる気がする。
『・・・・・どこら辺か分かる?』
「どこら辺からお気づきに?」
『たった、今だよね。』
「左様ですか、では相当前のことかと思います。」
『そっか、日和ちゃん覚悟しといてね?』
ゴクリと息を呑んだ。馨君、本気だ!
こってりどころか相当絞られる気がする。
身の危険を非常に感じる!
「あんた、顔色悪い。」
ケータイを切ってすぐにまた手の紐を解く作業に
戻ると明かりからあたしの顔を見たのだろう。
「常に無表情なので。」
「・・・・・そうか。」
固く結ばれた紐がようやく取れた時はすごい
お礼をされていい気になった。
困ってる人をほっとけるわけなかったから
差ほどお礼を言われるようなことはしてない
つもりだったのに不自由からの解放は相当
楽になったようであった。

