Hurly-Burly 5 【完】


困ったな、人様のお家にお邪魔させて頂いてるのに

どこへ行けばいいのか分からないし行き当たりばったり

な展開を待つしかない!

ココちゃんも夏君も気持ちよさそうに寝てるから、

起こさないように自力な探検隊を結成するしかあるまい。

迷路のように広いお屋敷でここがちぃ君に実家なんだと

思うとあのマイペースさの秘密がここにありそうな気がした。

「おっ、お嬢ちゃん見ない顔だね。」

ようやく、喋りかけてくれた人が居た。

今まで、会う人全てに存在してない透明人間にでも

なってしまったのか如く何も話しかけてもらえなくて

本気で悩みそうだった。

自分から話しかけるだなんてそんなことも出来ない。

「あわっ、こ、こんにちわ!初めましてです。」

立ち止まってぺこりとお辞儀するとハチマキを巻いた

オジサンが気さくに会話を始めた。

「若たちのご学友だってな。」

「は、はい!そうなのです。今日はお日柄もよく

お招き頂いて感動しています。」

「ハハッ、畏まったお嬢ちゃんだ。」

よ、良かった、この人チャルメラのオジサンみたいな

顔してるから怖くないし、むしろ親しみやすい!

太い眉毛がチャームポイントだと思う。

「んっ、何だ?夏坊に心ちゃんともう仲良くなったのか。」

「あはは、寝てしまったのです。」

このおっちゃん良い人そうだ!

「お嬢ちゃん、餅は好きかい?」

「はい?」

「ちょっと、おいで。」

「えっ、あわわっ!」

こ、このおっちゃん見かけによらず強引だ。

人の良さそうな顔なのに騙されるところだった。

黒宮組、恐るべし!侮りは禁物だ!

玄関じゃない縁側のところから草履に履き替える

おっちゃんにえっ!?と驚愕の眼差し向けると

おっちゃんがビーチサンダルをペッと出してくれた。

ふ、懐から出た草履に感動だ。

豊臣秀吉も感激するに違いないよ!

おっちゃん、実に面白いよ。

歴史の登場人物になったらあたしは絶対覚えとくよ。

教科書の偉人さんとして登場したら真っ先に覚えるだろうな。