何も聞かずにあたしは心に誓った。
馨君がこの物語で一番を極めるほどの裏ボスなんじゃないか。
「それ、貸して?」
あたしが抱えてる紙袋を見た馨君はあたしの手から
それを軽々と受け取った。
「日和ちゃん、よくこんな重いの持って走れたね。」
「そんなに重いかな?」
「女の子ならこんな重いもの持って走れないと思うよ。」
「・・・・・そうなのか?」
軽快なステップを踏んで来たことを脳内でプレイバック
してみるとやっぱり重いどころの話じゃなかった。
「重いならあたし持つよ。」
「いいよ、日和ちゃんは女の子なんだからこれぐらい持たせて。」
「か、馨きゅん!」
イケメンだな、おいっ!
あたしは感動をしているぞ!
こんなあたしでも女の子だと認められていることに
今まで生きてこれて良かったとさえ思うぞ!
「日和ちゃん、迷子になると困るから離れないでね。」
「イエッサー!!」
「本当に大丈夫?」
「No problem.」
馨君から信用されてない気がする。
それでも、さっきと違うのは馨君が通るところ
に道が出来るということに心底安堵した。
さっきの人といい、何でこうなる!?と問いただしたい。
馨君はケータイで連絡を取ってるようで、
たまにあたしが傍に居るか確認しながら対応していた。
一体、あたしの搜索に駆り出された連中は何人居るんだ!?
すごいな、不良メンバーズの捜索網。
馨君がふと何やら一瞬さっきみたいな
顔をしたと思った瞬間後ろから手を引っ張られて
地面へごっつんこかと身構えた。
誰かがあたしを陥れようとしている!?
「ヤバイな、・・・千治、日和ちゃんがピンチ。」
電話をしながら馨君がそう呟いたと思ったら、
急に手が解放されて思いっきり地面に尻餅付いた。
でも、そんなことよりも目の前の光景に目を疑った。
痛いよ、この野郎とさっき引っ張ってきた奴に
文句言ってやろうかと思ったけど言えなかった。

