男が去る間際堪えきれずに鼻でふんっと笑ってやった。
男が一つの建物に入っていくのを見届けてから早速
行動を起こしたというか走った。
暗闇に広がった路地の入り組んだ道を止まることなく、
ピンクの色が賑わう明かりが目印で本を抱えながら
走っているにしてはとてつもなく軽やかなステップだった。
あんな野蛮人種と関わらないように今後は自分の行動を
制限するべきかもしれないと改心して反省した。
暗闇の夜道はとてつもなく不気味で何となく
止まってはいけないという人間の危険察知本能が働いてた。
明るい通りまで出てくると、さっきのように人が
賑わう世界が広がっていて急に足が竦んだ。
やっぱり、この人の波を歩いていける自信はない。
いくら、みんなと関わるようになって大丈夫に
なってきたからって治ったわけじゃない。
完治するのかすら分からないこの奇怪な
蕁麻疹病があたしの足を引っ張った。
さっきは、あの男が居るせいか人が彼を避けてた。
何も言わずに道を開けるのが当然って感じだった。
それが、今ではこのザマなわけで大きくため息を
吐きながら一歩足を踏み入れた。
心臓が落ち着かないせいか慣れないところに
居るせいか何故か手が震えた。
こ、これはあたしの体の中で地震が起きている!?
すげーよ、あたし!マジで、すげーよ!
後で、慶詩に自慢してやろうか!!
あたしの体の中で自然災害が起こっていると
驚かしてやろうか!!
「お嬢ちゃん、迷子?つーか、可愛いね。」
そして、あろうことかあたしは格好のカモ
ってヤツなんだろうか?
あたしだって馬鹿じゃないからこの街の人が
陽気なわけじゃないことぐらい察する。
チンピラだってウヨウヨ徘徊してる。
今なら、喧騒音でひっくり返れる自信があるっ!
「No thank you! Don't touch me!」
「大丈夫?マジか、外国人の子?今から、店来ない?」
知らねぇよ!行かねぇよ!頭が高いよ!
あたしを外人だと思った男が何喋ったらいいかなと
携帯を弄りながら翻訳サイトを開いたのを見て
目の前の人の頭を心底心配した。
あたしに心配されるって相当ヤバイと思う。
もう病院行っても手遅れですって言われるんじゃないかと
気の毒に思ったその時だった。

