あたしが冷静になるということは極めて究極だ。
何者だか分からない男に何故か付き合って
やらなきゃいけなくなった時点で今日は悪運が
あたしを付き纏っているらしい。
こんなことなら、お祓いに行ってくれば良かった。
御札を貰って滝壺で体を清めて邪気祓いして
悪霊を払うことを先決にするべきだった!
しくじっちまった!
どうしたものかね?
もう家に帰ってジョセフィーヌとぬくぬくしたいよ。
そんなことを永遠と考えながら本を読んでいた。
だから、急に立ち止まった瞬間男の背中に顔面タックルした。
は、鼻が折れたかもしれない!!
あたしのお鼻さんがショックで立ち上がれないって
訴えてる気がして気が気じゃない。
「頑張れ、君はあたしのとりでじゃないか!
君なしではあたしの顔面はちょっと欠けた
物足りない女になっちまうじゃないか!」
必死に鼻に話しかけるあたしにギョッとした
視線であたしを見下ろす男なんて一切考えてなかった。
あたしのお鼻ちゃんが拗ねて辞職するかもしれない!?
「き、君はまだまだ活躍出来る若さじゃないか!
今、辞職することないやいっ。まだまだ、地盤を
固める機会はいくらでもあるさね。」
次の選挙投票日にはあたしも君に清き一票を投票しよう。
他の口とか目とかのパーツよりもだ。
「・・・・・お前、病気か?」
怪訝な瞳で見下ろされている。
病気かと口にして引き気味だった。
「まぁ、いい。少しここで待ってろ。ここには
誰も来ねえから心配は要らねえだろ。誰か来たら
大声で俺を呼べば助けてやる。」
別に助けなど要らんが?
何か、上から目線で言ってくる姿勢が気に入らない。
偉そうな態度して貴様は何様だと聞いてやろうかと
思ったがグッと堪えた。
これは逃げる絶好のチャンスが到来した!
今こそ、あたしの足が活かせるぞ。
ダッシュでタクシー拾えそうな大通りまで
出てやるからここで貴様とはおさらばよ!

