どうして居るんだ?って疑問よりも先に
段々と距離を縮めて来る馨君にあたしの手首を
ギリっと強く握り締められた。
「い、いたっ!痛いよ!ちょっと!」
さすがのあたしでも折れる。
いや、絶対に殺意を抱いているレベルの強さだ。
あたしを粉々に粉砕でもしようってのか!?
ひょろそうに見えて計り知れない戦闘能力だわ。
ゆっくりと口を開いた隣の男は不気味なぐらい
色白の肌を闇に同調させる。
「馨じゃねーか?」
そして、知り合いとはどうしても見えないのに、
男の口角は上がったまま馨君に視線を向ける。
「・・・どうも、風間さん」
馨君の顔に影が掛かったような気がした。
何だか、よく分からないけど知り合いなのかもしれない。
だけど、馨君しか今は頼りになる人が居ない。
「か、馨君っ!」
馨君のところに行かせろっ!!と思いながら、
腕を掴んだままの男を振り切ろうとするも
ピクリともせずにあたしを見下ろした。
「アイツと知り合いか?」
その低い声に背筋がゾクリと震えた。
もしかしたら、やの付くお仕事してるかも
しれない人なだけに迫力がある。
「し、知り合い!仲良し!」
だから、さっきからこの人あたしに構うの!
もういいじゃないか、知らない間に助けた
とか言うけど本当のところどうなのか分からない。
「ふ~ん、おいっ、行くぞ。」
「は、はいっ!?」
「お前には拒否権なんて与えてねぇだろ。さっさと着いてこい。
タダで返してやるとも言ってねぇもんな。」
悪魔だと思った。悪魔なんてまだ可愛いものかもしれない。
真っ黒な翼を広げていたら今すぐ魔界へ連れてかれそうだ。
「無効だ!クーリングオフだ!」
「俺の優しさは返品出来ねぇんだよ。」
「そんなもの知らんよ。クーリングオフは8日以内なら
出来るものだから返品出来るんだよ。」
とにかく、この人あたしをタダで帰す気はないとか
物騒なことを言ってる!?

