Hurly-Burly 5 【完】


どうして居るんだ?って疑問よりも先に

段々と距離を縮めて来る馨君にあたしの手首を

ギリっと強く握り締められた。

「い、いたっ!痛いよ!ちょっと!」

さすがのあたしでも折れる。

いや、絶対に殺意を抱いているレベルの強さだ。

あたしを粉々に粉砕でもしようってのか!?

ひょろそうに見えて計り知れない戦闘能力だわ。

ゆっくりと口を開いた隣の男は不気味なぐらい

色白の肌を闇に同調させる。

「馨じゃねーか?」

そして、知り合いとはどうしても見えないのに、

男の口角は上がったまま馨君に視線を向ける。

「・・・どうも、風間さん」

馨君の顔に影が掛かったような気がした。

何だか、よく分からないけど知り合いなのかもしれない。

だけど、馨君しか今は頼りになる人が居ない。

「か、馨君っ!」

馨君のところに行かせろっ!!と思いながら、

腕を掴んだままの男を振り切ろうとするも

ピクリともせずにあたしを見下ろした。

「アイツと知り合いか?」

その低い声に背筋がゾクリと震えた。

もしかしたら、やの付くお仕事してるかも

しれない人なだけに迫力がある。

「し、知り合い!仲良し!」

だから、さっきからこの人あたしに構うの!

もういいじゃないか、知らない間に助けた

とか言うけど本当のところどうなのか分からない。

「ふ~ん、おいっ、行くぞ。」

「は、はいっ!?」

「お前には拒否権なんて与えてねぇだろ。さっさと着いてこい。

タダで返してやるとも言ってねぇもんな。」

悪魔だと思った。悪魔なんてまだ可愛いものかもしれない。

真っ黒な翼を広げていたら今すぐ魔界へ連れてかれそうだ。

「無効だ!クーリングオフだ!」

「俺の優しさは返品出来ねぇんだよ。」

「そんなもの知らんよ。クーリングオフは8日以内なら

出来るものだから返品出来るんだよ。」

とにかく、この人あたしをタダで帰す気はないとか

物騒なことを言ってる!?