多分、普通の子だったら今ので何も言えなかっただろうな!
しかし、あたしはそんなものに屈するほどか弱くない。
「ククっ、今この状況でそれ言うか?」
「あなた、馬鹿なのね。もっと、利口になるべきよ。
折角、顔はイケメンなのに犯罪者にならなくたって
デカイ魚釣れるのに勿体無いことしてるわ。」
流れるような長い前髪に黒髪が爽やかにサラサラと靡く。
「やべーな、お前おもしれー女だな。」
「ど、どこが!?」
面白いって言われるようなことしてないわ。
「まぁ、悪いようにはしねぇよ。俺についてりゃ
お前の安全も保証してやる。」
この人があたしの安全を保証するだと!?
「ど、どこかに売る気か!?正気か!?」
「マジで笑わせんなや。」
勝手に笑ってるのはそっちじゃないか。
「心配すんな、この街で俺に逆らえるヤツなんて
誰一人も居ねえからな。」
「えっ?」
ど、どういう意味で言ってるんだね!!
それって・・・・やっぱりあたしの勘は
鋭かったようだ!
その真意を確かめるわけでも確定だった。
その後はもう魂でも吸い取られたようだったが、
逆に冷静になれた。
このまま、海に藻屑と化すぐらいなら読みかけの
本を読破してからでもいいではないかと開き直った。
どうせ、タダで返す気がないなら隙見て逃げればいい。
知らぬ間に、辺りが暗くなってきたが片手に本を
反対は見知らぬ男に拘束されたままあまりよく
知らない街をただひたすら走った。
さっき、この街で俺に逆らえるヤツなんて
誰一人居ねえと豪語してた癖になんてザマだ。
足音が後ろからとにかく聞こえては走るを繰り返す
男にいい加減隙出来ないかなと本を横目に伺った。
「な、何で逃げてるの?」
「んあ?」
何気なく吐いた言葉が最早脅しみたいだ。
「厄介な奴らがこの街乗り込んできてーんだ。」
繁華街へと足を進めて行く後ろ姿を見ながら、
ネオンに輝いた夜の街は不気味だった。
そこには、明らかにあたしの知らない世界があった。

