そのまま、真っ直ぐ家に帰る気にはなれなくて、
折角隣街まで来たのだからと散策してみたら、
匂いに惹かれて入ったカフェで読書をしてしまった。
ちょっとだけ見るつもりが集中力というのは怖い
もので気がついたらどっぷりと集中していた。
さすが、松門さんなだけあってセレクトが
ドストライクである。
土曜日ということもあってカフェには長く
居座ることが出来ずに場所を変えて公園の
ベンチに座って抹茶ラテを片手にのんびりと読書を続けた。
古書店の店主である松門さんではあるけど、
その道のエキスパートとかで古書ではない本で
珍しいものも扱っているんだとか。
普通の本屋さんでは手に入らないものを置いてくれてる。
母さんの知人は本当に変わり者が多い。
ペラペラとページを捲る音だけが響く。
周りにはチラホラ人が居るようだけど、
本に集中していて今は周りが全然見えてない。
あたしの悪い癖だと自覚している。
集中すると周りが見えなくなるのは、
時にして酷く無防備を晒していることになる。
今、あたしの全神経は本へと注がれているわけで、
何か違和感を覚えながらもページを捲る。
何か変な気がするけど、今はそれどころじゃない。
これからっていう時に中断なんて出来るわけなく、
その違和感をフルシカトで気にしなかった。
そもそも、あたしは何かに巻き込まれるような
生き方はしてなかったはずだ。
今までと何ら変わりなく生活しているというのに、
去年から厄年は続いてるみたいに何かにとり憑かれてる。
地縛霊か怨霊かはたまた呪いなのかもしれない。
「おいっ」
だけど、それを現実に捉えるからまた幻聴が聞こえる。
あたしを呪い殺そうとしてるんだろうか!?
一体、誰の仕業だって言うの!!
※被害妄想に走ると止まりません。
きっと、何かの間違いね。
あたし呪い殺されるようなことした覚えないもんね。
そんなはずない――――と思っているのに、
佳境に入った本の内容が全部飛んでいく勢いだった。

