Hurly-Burly 5 【完】


松門さんは謎めいていて人間離れした綺麗な

顔の持ち主で最初にあった時は異世界にでも

来てしまったのかと思ったことがある。

「母さんに頼まれたものを取りに来ました!」

「聞いてますよ、少し重いかもしれませんが

紙袋を二重にしておきましたからね。」

松門さんが視線を向ける先には大量に入っている

書物の紙袋が用意されていた。

「少し、お話しませんか?」

松門さんは母さんの美貌を前にしても屈しなかった

数少ない男だと母さんは言ってた。

どうも、母さんのことは多少困った友人だと

松門さん本人も話していた。

マミーも松門さんのことは知ってる。

マミー曰く、母さんの趣味を分かってる人だそうだ。

そのせいか、あたしの好む本も分かっているみたいで

読みたい本を何冊もくれる。

古びた洋館なのにほうじ茶を出す松門さんは、

相当な変わり者だと思う。

それでも、彼も頭の良い人で話が合う。

多少、勉強になることを聞いたりもする。

「日和ちゃんは、研究熱心ですね。やはり、将来は

そういう感じの仕事に?」

「いえ、他にやることがあるので!」

「それは、勿体無いですね。僕が言うのもなんですが、

君は君にしか出来ないことをするべきだ。

その頭脳を使わないほど勿体無いことはない。」

松門さんの言葉に何とも言えない顔をすると、

「君のことを決めるのはいつだって君だけです。

困った時は、相談に乗りますよ。」

極上の笑みと一緒に落とされた言葉に、

この人はあたしを責めてるわけではなく、

ただ単純に味方で居てくれてる人だって思えた。

やっぱり、母さんの知り合いに悪い人は居ない。

不思議な雰囲気ではあるけど、多少は変わった人

なのかもしれないけど、いいことを言う。

結局、あたしは選ぶ道を与えられてる。

これだと、決め付けているのはあたし自身で

周りはちっとも諦めてないのかもしれない。

奇跡のハッピーエンドなんて信じられないけど、

まだ他に方法があるんだって言うならあるのかもしれない。