母さんからの電話を切って、片付けを中断して
お昼ご飯を作って食べてから出かける準備をした。
ジョセフィーヌにお留守番を頼んで、普段は
あまり行くこともない駅へバスで向かった。
駅に着くと、休みの日ってこともあってか
混みつつある中をあまり人が居ない合間を
抜けて改札にたどり着いた。
普段あんまり電車は乗らない。
蕁麻疹が発症するので避けていたのだが、
最近は調子もいいだろうから気分転換に
電車に乗ろうと思っていた。
駅前は混んでたけど、思ったよりも空いてる
車内にホッとして端っこに座って窓の外の
景色が変わりゆくのを遠目で見ていた。
帰りは本もあるからタクシーで帰ろう。
本どれぐらいあるかな?
ちょっと、ワクワクしてきたな。
目的の駅に着いて改札を抜けると、
新鮮な街の景色に気分は向上した。
自分の住んでる街とは違う景色が広がる世界が
目の前にあると世界は広いものだなと思う。
トボトボ歩きながら街並みを沿って、カフェ通り
を曲がって小道に入る。
最初に頼まれた時は、探検みたいでドキドキした。
駅から少し離れた古ぼけた洋館が目印である。
お化けが出そうなんて噂もあるとかないとか。
母さんの知り合いだけあって変わった人が
店主ではあるものの確かに趣味のいい本を置いている。
チリンっと鈴の音がドアを開けた時に店内に鳴った。
「松門さん、日和です!!」
少し大きな声を発して来たことを告げると、
奥の本棚からひょっこり顔を出した。
「こんにちわ、よく来ましたね。いらっしゃい、日和ちゃん。」
質のいい和服を好んで着ている松門さん。
ここ、洋館なのに和服でいいのかと最初は思った。
でも、今では慣れてしまったせいか不思議と
それもアリかもしれないと思ってしまっている。
不思議な雰囲気を纏った男性である。
母さんとは高校時代からの付き合いらしい。
感性が似ているとか何とか言ってた。

