やっぱり、母さんはあたしが一ノ瀬を継ぐことを

反対しているのかもしれない。

『少し、頼まれて欲しいのよ。前にも頼んだこと

あると思うことよ。隣町の知り合いの古書店に

本を取りに行ってくれるかしら?』

これはよくあることで、母さんには知り合いが

たくさん居るわけで、古書店の店主とは長年の

付き合いで母さんが好きそうな本を取っておいてくれるらしい。

「いいよ、ニューヨークにまた送ればいい?」

受話器を持ち替えて書庫の壁に掛かっている時計を

チラッと見るとお昼前であることを差していた。

『日和が見終わったらでいいわ。早急に欲しい

わけじゃないからお願いね。それで、朔夜の

ところに送って欲しいのよね。母さん、少し

ニューヨーク離れてロンドンで短期の仕事が入ってね。

3ヶ月ほど、ニューヨーク離れるのよ。帰りに、

朔夜のところに寄る予定があるからそうして

くれると助かるわ。おみやげ買って送るからね。』

母さんが海外を飛び回ってることは小さい頃から知ってた

から驚くことではない。

「や、大和さんは?」

ニューヨーク離れるのか。

『大和は今別件で動いててロンドンには雅を連れてくわ。』

まさに、あたしの母さんはキャリアウーマンってのに

属するらしい。

秘書はそれなりに揃えてあるが、信頼のおける秘書は数少ない。

やり手の母さんは人を見る目が優れてる。

そもそも、母さんの知り合いで悪い人なんて知らない。

みんな、母さんのことを褒め称える人しか知らない。

しかし、大和さんに一体どんな無茶難題を押し付けたんだ!?

「お兄ちゃんは知ってるの?」

『朔夜には連絡しておいたから知ってるわ。朔夜も

忙しいみたいだけど、しばらくはロスに居るって言ってた

から大丈夫よ。日和は、変わりはない?』

「うん、もうすぐで学年末があるぐらいかな!」

『そう、日和は母さんに似て頭いいもんね。

無理はせずに頑張るのよ。母さん、応援してるからね。』

母さんは、ちゃんと母さんをしてくれてるのだ。

傍に居ない分、近況を気にしてくれて忙しい

合間を縫ってはちゃんと聞いてくれる。

自慢の母であり、あたしの目標である。