次の日の朝は永瀬家で朝食をご馳走になったところで、
一度家に戻ってレポートの整理やらに追われた。
兄ちゃんは、土曜だけどもシフトが入ったらしく
藤永さんが迎えに来て仕事へ旅立った。
そのため、ゆっくりと書斎を片付けることが出来る。
普段は、ここで大概研究の資料を制作する。
自室では軽い感想文を書いたりするけども、
書斎で仕事をすると集中出来る。
山積みになった本の山がいくつも重なる。
机にはたくさんのプリントで散乱していて、
まるで空き巣に入られたようだ。
よく、研究者の机は汚いとか言われるが、
片付けないのではなく片付けられない。
片付けると順番が分からなくなってしまう。
読み終わった本を手に取り、隣の書庫の部屋に
運んで棚に戻していく。
ここ最近は、読み物よりもレポート作成に
時間を費やしてきたなと思って読んだ本を
ペラリと捲っては戻す作業を続ける。
そんなことを続けていたせいか、お昼前に
なるのはあっという間だったと思う。
脚立の上で本を戻してる時にケータイが鳴って、
慌てて取りに行った。
よっちゃんかクルミちゃんがヘルプの電話かと
思ったら掛かってきたのは珍しく母さん。
通話ボタンを押すと初っ端からカツカツと
靴の音が響くわけで移動でもしてるのかなと思った。
『日和、元気にしてる?』
「う、うん。仕事忙しそうだけど、用事でもあるの?」
あたしに用事を頼むことは滅多にないが、
たまに頼まれることはある。
日本に居ない分、日本のことを頼むのは
あたしか大和さんしか居ない。
しかし、大和さんは最近忙しくしているらしく
日本に来れるのは3月に入ったあたしの誕生日の
ギリギリになりそうだと連絡を貰っている。
正式な後継者として一ノ瀬に認められるパーティー
に同席してくれるのは大和さん。
あたしの秘書だから当然のことですよと言ってた。
母さんは、それを知ってるわけで大和さんに
またもや無理難題を押し付けたらしい。

