さて、さっさと行って帰ってこようかな!

ひゅるりと冷たい風が頬を掠める。

今にも雪が降りだしそうな空に不安が募る。

急いだ方がいいかもしれないな。

降りだしたら昨日みたいに吹雪になるかもしれない。

昨日降ったばかりで地面は凍結していて、

サクサクと通ったところに足跡が出来る。

丁度、門を開けて敷地から足を踏み出した時だった。

門の横にしゃがみこんでいた何かが起き上がった。

「ちぃ君?」

どうしたのって聞く前にちぃ君が泣きそうな顔をして、

あたしを見上げた。

スーツ姿にダウンを羽織ったちぃ君が目の前に立ってる。

黙ってるちぃ君はあたしをずっと見つめてる。

「いつからここに居たんだ?風邪ひいちゃうじゃないか!

来たならチャイムを鳴らして家に入ってくればいいものを!!」

震えるちぃ君は防寒対策をしてなかった。

「お前に会いたくなった癖に今の自分見られたくねえんだ。」

「・・・・・何があった!?」

自分の首からマフラーを外してちぃ君の首に

マフラーを掛けてグルグルに巻きつけた。

スーツ姿のちぃ君は似合っていて目に焼き付けねばと

目を瞬かせているとちぃ君が手首を掴んだ。

「ち、ちぃ君!?」

そう声を上げるあたしにお構いなく、

引っ張るちぃ君に訳が分からなくなった。

何かあったのかもしれない。

でも、聞かれたくないようなことなのかもしれない。

ちぃ君の心を守ってあげるには今のちぃ君に

付き合ってあげることが一番なのかもしれない。

「ちぃ君、知ってる?雪って、大気中の水蒸気から

生成される氷の結晶が空から落下してくる天気のことなんだよ。

だから、普段雨降るはずのものが空中で彷徨ってる内に

固形化して地上に降り積もるものなの。」

この白い一面を作るのが結晶の塊なのだ。

「そうなのか?」

地面に視線を向けると雪を見つめて、

ちぃ君がまた切なげな顔をして泣き出しそうな

ほど弱々しく見えてギュッと拳を握った。

こんなちぃ君はチューリップ以来な気がする。

それ以上に傷ついているような気がして、

何とかしてあげたいって思った。