Hurly-Burly 5 【完】


箱に入ったケーキを見るとすげーって声を

漏らした2人に照れくさくなった。

「お口に合うといいのですが。」

立ち上がってキッチンを借りますねと

言いながら勝手に弄った。

鞄からこういうことも想定済みだったから、

最近送ってもらった上等品種のブラジル産の

コーヒー豆を挽いてきた。

「コーヒーはブラック派ですか?」

深みのある香ばしい匂いがキッチンを包み込む。

いつもそうだった。

大人だったからあたしには到底真似出来ないんだ。

“あの人”はあたしにいつも教えてくれる。

無知なあたしを蔑ろにしないで付き合ってくれる。

「コーヒー淹れてくれるの?」

「丁度、お兄ちゃんからコーヒー豆が

大量に送られてきたので一緒に合う

ケーキを作って見たのです。」

コーヒーの香ばしい匂いを放ちながら、

いつもテラスで読書してる“あの人”を

見ては飛びつきたくなったのを覚えてる。

「ヒヨリン、コーヒー淹れるの上手いんだ!」

ナル君がにんまりと笑顔を浮かべる。

「へえ。確かに、豆から挽いてるみたいだし、

淹れ方分かってるみたいで手際いいね。」

やっちゃんさんの視野に驚く。

そんなところまで見られてた!?

「コーヒーは上手に淹れたくて修行をしたので!!

もし、美味しいコーヒーが飲みたくなったら

いつでも家に来てください!大歓迎で家の設備の

整ったマシーンを使ってご馳走します!!」

いつも飄々としている彼が握っている

カップに目を配らせて思った。

もしかしたら、彼はコーヒーが好きなのかもしれない。

「えっ、いいの?」

「はい、もちろんです!」

ふとターヤンさんがキッチンに視線を向けた。

「日和ちゃんって将来そういうのになりたかったりする?」

はて?と思いながらターヤンさんに首を傾げる。

そういうのって喫茶店を開くとかカフェの店長に

なりたいとかそういうことか!?